よく地球温暖化に関わる話として、北極の氷が溶けて海面が上昇しているという話がありますが、必ずしもこれは正しい言い方だとは言えないかもしれません。なぜなら、北極の氷が溶けても直接的には海面上昇には繋がらないかもしれないからです。
こう考えてみてください。ここに一つのコップがあります。中には水がなみなみとつがれていて、完全にコップの上の縁まで水が入っているとします。ちょうど表面張力で水がふくらんでいるような状態を想像してください。そしてそれだけではなく、このコップの中の水には氷が入っています。氷は水の上に浮き、水面から顔を出し、突き出ています。でも水はまだこぼれていない、そう言う状態です。
さて、この氷が溶けたらどうなるでしょうか。水が溢れてしまう!と思いますか? いいえ、結果は、水は溢れないのです。
なぜか説明しましょう。水というのはこんなにありふれた物質なのに、珍しい性質を持っていて、凍ると(つまり固体になると)体積が膨張します。水は氷になると大きくなるのです。氷が水に浮くのは同じ重さでも体積が大きくなると同じ大きさあたりでは相対的に軽くなるからです。また、水に浮いている氷で水からとびだしている部分というのはちょうどこの体積が増えた分となります。
そして氷は溶けると水になります。体積が小さくなるのです。つまりちょうど水からとびだしていた部分の氷が溶けると、ちょうどもとあった水面はそのまま保たれるということになるわけです。だから、水は氷が溶けてもコップぎりぎりに入ったまま、溢れないのです。
これを北極の氷に当てはめて考えるとこういう事になります。北極の氷は海に浮いています。だから北極の氷の海面から上に見えている部分は水が凍った結果として増えた分と言うことです。だから北極の氷が溶けても海面はそのまま、海面上昇は起こらないというわけです。
ただ、このことは氷が大陸の上にある南極では当てはまらないかもしれません。また、地球温暖化による海面の上昇の原因として考えられることは他にもあります。水は温められると体積が膨張します。地球の海全体の体積は非常に大きい(と言っても地球そのものの体積から比べれば微々たるものですが)ので、海の体積が増え、結果、海面が上昇するのです。つまり地球温暖化による海面上昇は、基本的に「物質があたためられると体積が増える」という性質から起こります。
また、海面上昇とは直接関わりありませんが、北極の氷が溶けると、氷は真水ですので近海の塩分濃度が低下します。そうすると深海を含めた地球全体にある深層海流というものが弱まり、極地では寒冷化、赤道付近では、温暖化が予想されると言う話もあります。
北極の氷が溶けても直接的には海面上昇には繋がらない、と言うことがわかっていただけたでしょうか。でも、結局は温暖化は海面を上昇させ、地球の環境を悪化させることもまた間違いないことです。
※今回この記事で書いたことは、昔どこかで読んだような気もするので、誰かがどこかで書いている既知の話かもしれません。それを紹介するという意味でもこの記事を書きました。
■(2008.12.6)
posted by whitecaps at 12:50|
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